Destiny 〜10〜

Destiny

 ガラガラとどこかで何かが崩れる音が聞こえる・・・・・・。





 守りたいものは、何?
 求めているものは、何?





 何かが壊れている・・・。

 その音は一瞬たりとも、止むことなく。















































 イザークとキラの関係が最悪の状態でいても、周りにはいつもの通りにしか見えていない。

 その中で、キラの様子に気付いているものを言えば、アスラン、ラクスぐらいだろうし、イザークの様子に気付いているのはディアッカぐらいだろう。

 しかし、気付いていても声をかけることが出来ないほど、キラとイザークの間にはぴんっと張り詰めた糸の緊張感があり、漠然とだが、それが切れてしまうことに恐れを感じていた3人は、ことの成り行きを見守る事しか出来ず、そんな自分に歯がゆさを感じていた。





 日に日に静かになってゆくイザーク。
 キラキラと表情豊かだった瞳が曇り、何も映さなくなっていくキラ。





 そんな中、突然ドック内に鳴り響くエマージェンシーの警報音によって、運命の歯車は動き出したのだ。

「サカキ、何事だ」

 偶然ドック内にいたカガリが近くの内線コールを押し、画面にオーブ陸軍第21特殊空挺部隊の一佐、レドニル=サカキが映し出される。

「オーブ西区域の市街地に突然、正体不明のMSが現れた。そちらにいるイザーク=ジュールとディアッカ=エルスマンの出撃要請が出た」
「出来うる限りのMSの詳細と、状況データをこっちに送ってくれ」
「わかった。3分内にデーターを転送する」

 カガリとサカキのやりとりが聞こえ、その場にいた全員の緊張が走る。

 イザークはテストしていたMSからさっさと降りると、計測用のパイロットスーツを脱ぎながら、壁にかけてあった自分用のパイロットスーツに手をかけるのを見て、ディアッカも、見ていたデーターファイルをミリアリアに投げて渡し、自分用のパイロットスーツがある方に向かいながら、計測用のパイロットスーツのジッパーに手をかけた。

 3分後、サカキからデーターが送られ、キラがそれを呼び出す。

「MSの所属元、不明。MSの高画質画像は・・・」

 キラがキーボードを叩くと、正体不明のMSの画像が開いた。
 その正体不明のMSは、地球連合軍のアズラエルの開発したMS、カラミティ、レイダー、フォビドゥンのそれぞれの特徴を集合させたような姿だった。

「地球連合軍のMS?」

 カガリの言葉に、キラは素早く画像を閉じるとキーボードを目にも止まらぬ速さで叩き始める。

「キラ?」
「カガリ、黙って!」

 何をし始めたのかわからず、聞こうとしたカガリを、キラにしては珍しく厳しい声を出し、カガリは口を閉じた。

「出た!」

 キラの言葉と同時に、正体不明のMSの詳細が画面に表示される。

「正体不明のMSは、あのアズラエルの開発したMSの1つ、ディアボロス(Diabolos)・・・・・・。でも、このデーター上は、失敗作として廃棄処分になってる」

 前にパスワードを調べておいた地球連合軍の軍事機密のデーターにアクセスし、キラは情報を引き出したのだ。
 しかし、データーには廃棄処分となって処理されている。

「データー上どうなっていようと、俺には関係ない。とにかく、今はそいつが 街を破壊しているのなら、俺達が出て止めるだけだ」
「イザーク・・・」

 パイロットスーツに着替えたイザークが状況を見ていたらしく、キラに言葉を返す。
 声を聞き、後ろにいたイザークに気付いたキラは心配そうにイザークを見上げるが、イザークはキラの顔を見ることもなく、後ろにいたディアッカに声をかける。

「ディアッカ、支度は済んだか?」
「ああ、いいぜ」
「行くぞ!」

 2人は、それぞれ自分のMSに向かい、乗り込む。

 出撃準備が整ったデュエル、バズターを起動させた2人は、自分のガンダムの足を射出レールに乗せる。

 MSを射出させるために、天井が開いていく。










 キラが不安そうな表情でデュエルから目を離すことなく見ているのを、イザークはコクピットのスクリーンで見てた。

 キラが自分よりMSを操る術が優れていると認めているが、MSを乗ることを嫌がっているキラに、もうMSに乗るようなことはさせたくなかいイザークは、ズームにしてスクリーンに映るキラの頬のあたりを指でなぞる。

「心配するな、キラ。もう、お前がMSに乗ることはない・・・。俺がいるんだからな」





 優しく、労わるようなイザークの声が、誰の耳に入ることもなく、静かにコクピット内に木霊した・・・・・・。

















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2004/03/12 作成