「イザークもずいぶん髪、伸びたね」 2人が出会ってもうすぐ1年。 いつもの昼食後の昼下がり、ソファーにゆったりとくつろいで本を読んでいたイザークに、いきなり後からキラが抱きついてきた。 集中して本を読んでいても、キラの気配に気づいていたイザークは驚く事はない。 今も本から目を離すことなく答えている。 「ああ、うっとおしくてかなわん」 「切らないの?」 キラに言われた髪も、今は肩より少し下になるほど長く伸びたため、イザークは本に集中したくて1つに結んでいた。 後ろからイザークの表情を覗こうとしているキラに、イザークも本から目を離して視線を合わせると、大きな紫水晶の瞳が、まっすぐにこちらを覗き込む。 「切ったら誰かさんがうるさいからな」 「誰かさんって、僕の事?」 「他に誰がいる?」 首を少しかしげて聞いてくるキラに、イザークも少し苦笑する。 何だかんだと周りでうるさく騒ぎ、うっとうしいと思っていたのに、いつの間にか一番近い場所に居座っている存在。 それがイザークにとってキラだ。 母親譲りの銀の髪は、別に何の手入れもしていないのだが、必ず誰からも誉められる。 誰に誉められても、イザークにはどうでも良かったのだ。 髪は生えているだけのものだから・・・・・・。 さらさらとした髪は耳にも引っかからず、するりと元に戻ってしまうため、邪魔なのだが、キラがあまりにもうっとりとした表情で何度も誉めるため、つい切りそびれ、伸びてしまったのだ。 それにキラは、何かと髪に触れてくる。 本人は無意識なのだろうが、キラは何かとイザークの髪を指に絡めて遊ぶ。 イザークは髪を切ってその仕草が見られなくなってしまうのが惜しくて、いつの間にか切る気も起きなくなっていた。 「イザークの髪って、シルクよりずっと綺麗で触り心地も気持ちがいいんだよね」 嬉しそうに言うキラに、イザークは頭を後ろから前に押し出し、自分の唇をキラの唇に落とす。 「俺は、お前の唇の方が気持ちがいいけどな」 「・・・イ、イザーク! ここ、社の休憩所なんだよ。誰か見てたら!」 真っ赤な顔で慌てて周りを見回す様子のキラに、イザークはニヤリと笑みを浮かべる。 「もう、ずっと前から何度か人に見られてるぞ。気づかなかったのか?」 「え? ええっ〜!」 さらに顔を赤くしてあたふたとしているキラを見て、イザークは笑いながらまた、本に視線を落とす。 騒いでいるキラの声をBGMにして。 騒がしくて、時々うっとうしいけれど、一番特別な存在だから幸せにしたい。 イザークは、多少髪が邪魔でも、キラが喜ぶのならそれでいいのだ。 すべては、キラのためだけに・・・・・・。
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髪を伸ばし始めているイザークと、かわいいキラちゃんが書きたかったのです。
[2004/01/26]