プラントから和解への道が提示され、すべてが終わりを告げた。 クルーゼとの戦いでフリーダムを失い、1人宇宙を漂っていたキラのもとへ、ジャスティスではなく、カガリのストライクルージュに乗ったアスランとカガリが来てくれた。 これまでの長く辛い道のり。 あてもなくさ迷い、苦しみや悲しみばかりの道だったのに、やはりすべて終わった事が嬉しくもあり、もう前の自分とは変わってしまった自分が哀しくもあった。 でも、2人の笑顔を見れば、共に望んだ願いを叶えたことがひとしおの喜びを湧き起こす。 「キラ」 「・・・アスラン・・・・カガリ・・・」 3人で喜びを分かちあった後、とにかくエターナルに戻ろうと言う事になったのだが、すでにストライクルージュにはアスランまで乗っていて、コクピットはもともと1人用だし、完全に定員オーバーの状態だ。 「キラはストライクルージュの手の指にでもつかまっていればいいさ」 「え?」 カガリの提案に、2人の表情が引きつる。 確かにカガリは宇宙戦の訓練を受けて、今の戦いにも立派に戦ってみせた。 しかし、第4コロニーでの物資を運びかえる作業に参加しなかったのは、戦闘以外、まったく役に立たないからなのだ。 つまり、物資を握りつぶして破壊すると言う事で、作業の手伝いを拒否されたということを2人は知っていた。 「あー・・・、いや、ディアッカとかに迎えに来てもらえばいいんじゃないか?」 「なんでだ? わざわざ誰かを迎えに来させる必要なんてないだろう?」 「や、やっぱりコクピットじゃないと寒いし・・・ね? アスラン」 「宇宙服を着てるじゃないか」 「それでもやっぱり寒いと思うぞ!」 「・・・そうか?」 納得出来ない表情を浮かべるカガリを何とかごまかし、アスランは急いで回線をオープンにする。 「ディアッカ! ディアッカ!」 『何?』 名前を呼ぶと、すぐにディアッカの応答があった。 「悪いが、今送った座標にいるからキラを迎えに来てくれないか? 俺もキラも機体を失って、今、カガリのMSに乗せてもらっているんだ」 『・・・悪い。俺のバスターもやられちまって、今、修理の最中』 ディアッカのその言葉に、カガリが『じゃあ、やっぱり私のストライクルージュに・・・』と言っているのを無視して、そのまま会話を続ける。 いくらなんでも、キラがカガリのMSで潰されるようなことは勘弁願いたいのだ。 「じゃあ、ムウさんにでも頼んで・・・」 『あ・・・、あのおっさん・・・戦死したそうだぜ』 「「!」」 信じられない話に、アスランとキラが顔をあわせ、すぐにキラの表情に悲しみの色が広がる。 何だかんだと軽口をたたいてはいたが、ムウはキラを色々と助けてくれた。 そんな想い出が思い出された。 『アスラン、俺が送り届けてやろうか?』 キラが悲しんでいる時、いきなりアスランの良く知った声が回線に割り込んできた。 「・・・イザーク?」 「ああ」 イザークの申し出に、イザークの性格を知っているアスランは、ひどく困惑してしまう。 今まで、親切心だけで動くようなことはなかったし、また、ザフトを裏切るようなことになってしまった自分たちを許すような性格でもない。 それなのにこの申し出。 『その座標のすぐ近くに俺はいる。足つきにディアッカを送ったんだ。今更もう1人送ったところでさして変わらんからな』 「・・・・・・」 傷のことでキラに執着していた問題もあって、すんなりと頼むことが出来ない。 「・・・キラに何もしないで、無事に送ってくれると約束できるのか?」 「アスラン! せっかく言ってくれているのに、失礼だよ」 アスランの失礼きわまりない言葉に、キラが驚く。 しかし、イザークは潔癖な性格の持ち主だけあって、1度約束した事は必ず守ってくれる。 キラに手出ししないと約束させれば、必ずキラの身は保障されるのだ。 キラを弟のように思うアスランにとって、どうしても確認しておかなければならない。 『ソイツには1つ借りがある。俺の命に代えても無事に送ってやるから安心しろ』 多少の不安はあるものの、約束を守ってもらえると確信しているアスランは、イザークにキラのことを頼むことにした。 「わかった。・・・頼む」 『・・・今、そちらへ行く』 回線が遮断され、しばらくした後、デュエルが現れてコクピットが開かれた。 そこに久しぶりに会ったイザークとアスランだが、挨拶もかわすこともなく、イザークはキラを呼ぶ。 「おい! さっさとこっちに来い」 「え?」 戸惑いつつも、キラは慌ててデュエルのイザークのところへと行く。 「足つきでいいんだろう?」 「いや、エターナルの方だ」 「わかった」 それだけアスランと会話を交わすと、イザークはキラをコクピットに引っ張りこんで、ハッチを閉め、すぐにデュエルがエターナルへ向かって飛び立つ。 キラは狭いコクピットの中で、操作の邪魔にならない位置に体を割り込ませ、初めて見るデュエルのパイロットに戸惑ってしまい、何も言う事が出来ない。 結局何の会話もないまま、すぐにエターナルについた。 着艦許可を取って、デュエルがエターナルに入ると、すぐにイザークがコクピットを開いた。 「ついたぞ」 「あ・・・」 お礼を言うべきなのはわかっているが、この場合、わざわざ送り届けてくれたのだ。 エターナルに招待すべきなのかと、キラは迷う。 「? どうした早く降りろ」 「あ、あの、ありがとうございます! それで、アスラン達ももうすぐ来るだろうし、少しこちらで休んでいかれませんか?」 なかなかコクピットから離れようとしないキラに訝しげなアイスブルーの瞳が向けられ、焦ったキラは、何とか言いたい事だけを言って自分の名前を名乗っていない事に気付いた。 「あ、僕、キラ・ヤマトって言います」 「・・・・・・」 急いでメットを外し、キラはイザークに向かって頭を下げる。 すごく驚いた表情を浮かべた後、イザークもメットを外し、自分の名前を名乗った。 「イザーク・ジュールだ」 見事な銀の髪が舞う。 それにキラは見とれながらも、また同じ言葉を繰り返す。 「・・・少しだけ、少しだけここで休んでいかれたらどうですか?」 戦闘が終わったすぐ後に、自分をここまで送ってくれたイザークの疲労を心配して、そんなことを言い出したのだが、イザークに対し、興味を持ち始めてもいたのだ。 「・・・そうだな。では少し艦内を案内してもらおうか」 「はい!」 2人は、こうして出会うのだった・・・・・・。
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何か、最終回を観て、こんな話になって2人が出会ったら面白いのに・・・と、思ったことです。
とにかく、2人が出会わないと話しにならないのに、結局、2人は会わないままでしたよね。(機体越しなら何度も会ったけどね)
マニアなカップリングって、こうゆう妄想が出来るんだけど・・・。
やっぱり2人が会わなかったのは淋しいよぅ。
(2004/02/24)