ジオラマ
鏡。
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撮影に入る前に、出演者との顔合わせがあるとかで、私とミリィは撮影場所となるガンダム専用のスタジオがあるビルの控え室に来ていた。 ミリィと私が2人の控え室だという部屋に案内されてみれば、そこに、福田監督と副監督と、ラフな格好をした女の人が座っていた。 「あ・・・、おはようございます」 「おっ! キラ、おはよう!」 戸惑いが声に出てしまっている挨拶に、福田監督は人のよさそうな笑顔で挨拶を返してくれ、私は少し安心出来た。 ここに来る時は、男の子の格好で来るようにと電話での指定があり、今日も私は弟の服を勝手に拝借して着ている。 「わぁ〜、カントクの言う通り、ホント可愛い!」 「だろだろ?」 監督と一緒にいた女の子が、私を見て、嬉しそうにそう言いい、それに対し、なぜか監督が得意げに答えた。 「キラ、君に話しておきたいことがあってね。2人はみんなより少し早めにきてもらったんだが、さぁ、私の前にでも座るといい」 「はぁ・・・」 勧められるままに、ミリィと私は監督達の前に座ると、監督は私の格好を上から下まで見て、にっこりと優しげに微笑みかける。 なにやらその笑みに一抹の不安を感じるのは気のせいだろうか? 「ところで、君のお母様の旧姓を聞いてもいいかな?」 「母の旧姓・・・ですか? ヤマトですけど・・・」 「ヤマト・・・そうなの」 突然の質問の意味がわからないまでも、私は素直に答えてしまう。 その答えに満足した様子の監督は、にこにこと微笑みながら、顎を指でさすっている。 「副監督ともあれから色々と話したんだけどね。やっぱり、女の子が男の子を募集していたオーディションで合格して主役をするっていうのはマズイんじゃないかって話になったんだよ」 そんな監督の言葉にドキリとする。 もしかして、こんなギリギリになって、いまさらダメって言うの? そりゃ、確かによくはないんだろうけど、だったら顔合わせの日にいきなり言い出さないで、もっと早く言ってくれればいいのに・・・。 そんな沈んだ表情の私を見ながら、福田監督はまだ笑って顎をさすっている。 「それでもう一度キラの意思を確認したいんだけど、それでもSEEDに出る?」 「はい・・・もし、出られるのなら出たいです! だってずっと好きな作品で・・・」 「どんなこともちゃんと僕の言うことを聞くって言ったよね? それも気持ちは変わらない?」 「? はい」 監督の意思が汲めない私は、言葉の表面上の意味のまま頷く。 演技はしたことないけど、一生懸命上手になるように頑張るし、ちゃんと監督の話を聞いて、いい子でいるつもりだけど・・・。 頷く私に、福田監督はさらに笑みを深くし、ソファーに深く腰掛ける。 「んじゃ、君はこれからキラ・ヤマト君だ」 「「「は?」」 見事に私とミリィの声がハモる。 今、福田監督、私のこと、キラ・ヤマトって言わなかったっ!? しかも、君付けだったよね? 「君は男の子だ。だから、君がオーディションで合格しても、なんら問題はないというわけだ」 「は、はぁ・・・」 「そして、男の子がそんなに髪が長いのはおかしいと思わないかね?」 「髪?」 まさか・・・と、あることが思いつき、自分の髪に手をやる。 私の髪は、背中の中ほどまでに長い。 それを今日も帽子の中に入れて、外からは見えないようにしている。 「だから、これから短くしようね?」 予想通りの答えに、ちょっとびっくりしつつも、私はコクリと頷く。 そんな私に、横にいたミリィがビックリした様子で振り返る。 「ちょ、ちょっとキラ! キラはそれでいいの?」 「うん、別に髪ぐらい・・・」 「髪ぐらいって、せっかくそこまで伸ばしたんじゃない」 「うん、でも、また伸びるし・・・」 別に伸ばしてたわけじゃない。 ただ、あんまり女の子らしくないから、髪を伸ばせばちょっとは女の子らしく見えるかな?って、そんな思いから伸ばしていただけだったし、男の子の役をやるのなら、長い髪なんてじゃまなだけだ。 「そうそう。撮影が終わる1年ちょっとだけだよ。それが終わったらまた伸ばせばいい。とにかく、今君は男の子なんだし、やっぱり、役のイメージ的に短い方がいいんだ。可哀想かもしれないけどこれから切ってもいいかな?」 「はい、全然かまいません。髪も本当は短い方が好きだし」 「そう。それは良かった。七瀬君。キラ君に一番似合う髪形に切ってくれ」 「はい、カントク」 七瀬君と監督に呼ばれて返事をしたのは、やっぱり横にいた女の人で、どうやらヘアーメイクさんらしい。 七瀬さんって人は立ち上がると、優しく笑って、後ろの席に私を呼んだ。 「じゃ、集合時間はこれから30分後に、上の第三会議室で顔合わせがあるから、その前に僕のところへ顔を出してね?」 「はい」 監督と副監督が部屋から出て行くと、ミリィが心配そうに私の横に座った。 私はケープに手を通し、大人しくしている。 「キラ・・・本当にいいの?」 「うん、ミリィありがとう。でもね。髪はすぐに伸びるだろうけど、この役は1度しかないんだもん。私には髪よりこっちの方が大事だよ」 「・・・そうよね」 私の言いたい事がわかっているミリィは、すでに私の言葉に納得しているようだった。 でも、やっぱり、心配は心配なんだろう。 私は、そんなミリィににっこりと笑って見せるのだった。 「うわぁ〜♪」 鏡に映っている髪を切った私は、どこから見ても男の子に見える。 あんまり弟と似ていないと思っていたけれど、ちょっと似てるかも・・・。 「キラってば、男の子みたい!」 「見たいじゃなくて、僕は男の子なの!」 わざと声を低くして、作った声でミリィに言葉を返す。 ん! 何かいい感じじゃない? 「キラ・・・、やる気、バッチリなのね」 ちょっと呆れ気味なミリィと、七瀬さんにお礼を言って、監督の控え室へと向かう。 角を曲がった時、向こうの角で、あの銀の髪の月の王子様を見たような気がして、一瞬足が止まった。 「キラ?」 訝しげなミリィの声に我にかえり、気のせいだと自分に言い聞かせ、監督の控え室へと、また歩みを勧める。 監督に見せると、福田監督は出来栄えに大満足したようで、嬉しそうな監督との話し合いで、今後は、誰であろうと、女の子だということは放映が終わるまで内緒だと言うことと、キラ・ヤマトと名乗ることになった。 その秘密が自分を苦しめることになるともしらずに・・・・、その時の私は、主役になることの楽しみでいっぱいだった。 |
ああ〜うう〜(汗)
予定では顔合わせまで行くつもりだったんですが、レイアウト上、どうも区切りが悪いということで、ここでいったん切りました。
そして、ボケていたことに気付いてしまい、急いで修正。
きっと読んだ人は、殆どの人が「アレ?」って思ったことでしょう。
確認してみれば、修正が入っていることがわかりますよ(笑)
いつものごとく、ボケが入ってしまったので、スルーでお願いいたします。m(_ _)m
ああ〜〜〜〜〜〜(汗)
2004/03/22 作成