映画




 進藤はアクション物。
 僕はヒューマン物。

 わかりきっていることだけど、映画の趣味までまったく趣味が合わない。

 けれど、順番にお互いの観たいものに付き合う。
 目まぐるしく動く画面についていくのがやっとの僕だったけれど、時にはアクションものも悪くないと思う時がある。
 きっと進藤と一緒でなければ、それすら気付かなかった。

 正反対だから、自分の知らなかった世界を知る事が出来る。

「あそこでよー、ちょっと涙ぐんじゃったぜ。ちょっと感動だな・・・・・・。塔矢は?」
「うん、僕もあのシーンは良かったと思う。こんな時、自分だったらって考えさせられるよ」
「だな」

 今日は僕の観たかったものに、進藤が付き合って一緒に映画を観て来た。

 いつもは眠い、面白くないって文句を言うけれど、今日の映画はよほど気に入ったのか、饒舌に感想を述べながら誉めている。

 少し先を歩いていた進藤は両手を頭の後ろに組んで、僕に振り向く。

「俺、お前がいなかったら、今日の映画なんて観なかったと思う」
「うん」
「趣味が合わないって面倒くせーって思っていたけど、今は悪くないって思ってる。俺、お前の視界で見ているものにすごく興味あんだっ!」

 そう言って笑うと、ちょっと照れた表情になってクルリと前を向いてしまった。
 照れているから顔を見せたくないんだろう。

 お互い違うから、補うことが出来るのかもしれない。

 知らない事を知って、知っているつもりだったことを知らないと知った。

 僕らはそうしてたくさんのことを知る。

「僕も最近、アクション物も好きだよ」
「え?」

 進藤が意外そうな表情で振り向く。

「僕も君の視線で観ているものが見られるようになったからかもしれないね」

 そう言って笑ってみせた。
 進藤は、ほんの少し困ったような表情を覗かせる。

「ばーか」

 君はすごく嬉しそうに笑った・・・・・・。










END

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