Destiny 〜01〜

Destiny

 まだ未成年でありながら、戦争を終結させた当事者として、大人と同じ扱いをされるようになった者が数名。
 その数名、全員がここに集まっていた。

 その中で、キラは双子の姉であるカガリと揉めていた。

「はあ? 何言って・・・」
「もう決まったんだ」

 戸惑うキラの言葉を遮り、強引に言い切るカガリをアスランも困ったように見ていながらも、止めようとはしない。
 キラの横にいる、恋人であるはずのラクスですら、美味しそうにお茶を飲んでいるだけで干渉する気のないことを態度で示している。

「あ、ちなみに、これを決めたのはわたしとラクスだから」
「・・・ラクス?」

 自分だけが独断で決めたわけではない、恋人の許可つきだと、カガリは言っているのだ。
 たとえそれが本人の意思を無視しているものでも・・・。

 それを聞いたキラは初耳の上に、勝手に話を決めた事が信じられず、横にいたラクスを振り返えるが、ラクスはキラの視線を受けてにっこりと微笑えんだ。

「あら、このご時世ですもの、カガリさんも弟のキラがついていたらとても心強いはずですわ」
「それは判るけど・・・、カガリにはアスランがいるじゃないか」

 別に一緒にいるのが嫌なのではない。
 一緒にいる為に用意された場所に不満があるのだ。





 カガリがキラの為に用意したのは、モルゲンレーテ社のMS技術開発部の主任の席。
 もうMSは乗りたくないというキラの意思を尊重すると共に、キラの能力を最大限に生かした仕事であった。

 しかし、MS技術開発という仕事も嫌だったし、その責任者である主任という位置はまだ学生のキラには重すぎる。

「安心しろ、MS技術開発部と言っても、現在あるMSの整備と、環境整備に必要なMSの開発をするのが仕事で、前のように戦争をする為のMSを開発するような仕事じゃない。それにメンバーもエリカ=シモンズをはじめ、AAの整備士や、お前のカレッジの友人であるサイやミリアリアなんかだ。つまり、関係者全員、お前の知り合いで固めてる」

 完全に仕組まれている内容に、キラも次の言葉が告げられない。










 しばらくして、落ち着いたキラは、ため息をこぼしながら首を横に振った。

「・・・無理だよ。僕は学生なんだし、学校に戻らないと」
「何も学校を辞めて仕事をしろなんて言っているわけじゃないんだ。カレッジには休学届を出せばいい。半年・・・いや、1年、キラの能力を貸して欲しいんだ! それから学校に復学すればいいじゃないか」

 必至な顔をしながらも、簡単に言うカガリに、キラは困ってしまう。
 確かに、1年ぐらい休学してもキラなら大丈夫だろう。
 しかし、物事はそんな簡単なことではない。

 主任など、キラには務める自信などなかった。
 たとえ周りが知り合いだけであっても。

「キラ〜」

 泣きそうなカガリに、キラも心が揺らぐ。
 これは自分をはめる為の演技だと、キラ自身にもわかってはいるが、どうしてもカガリの泣きそうな顔には弱い。
 救いを求めてアスランに視線をやるが、アスランはキラの視線を受け、気まずそうにそらす。

「キラ、争いは終わりましたけれど、キラは微妙な立場上、キラの身の周りにはまだまだたくさんの危険がありますわ。ですが、オーブのモルゲンレーテ社でしたら安心出来ると思いますの。ですから、キラ、引き受けてくださいませ?」

 カガリに加え、ラクスまで泣きそうな顔をされ、キラは結局白旗を上げるしかなかった。

 それが策略だとわかっていても、想う気持ちは本物だからだ。





 表向きはMS技術開発部の主任ということになったが、キラの身の上は味方に守られ、オーブによって保護されることとなった。

 しかし、策略は、キラにだけ巡らされたのではない。
 キラを守る為だけに、陥れられた人物がもう1人・・・・・・。

















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2004/01/23 作成