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ジオラマ
オーディション。
素材「ネジ式」様
 大好きなドラマシリーズの最新作、「SEED」の主役オーディションの申し込み用紙の性別の欄には、男の子の所にマルがついている。





 でも、実は私、女の子だったりするんだけどね。

 どうしても「SEED」に出てみたかった私は、見た目が中性ぽいってことで、性別を偽って応募。

 おかげさまでこのたび、めでたく第一次審査に、無事に合格いたしました♪

 私が応募した役は主人公。
 たった1つの役だもの、最終審査で合格することはないかもしれないけど、それってつまり、性別を偽ってても、落ちるまで女の子だってバレなきゃいいってことでしょ?

 それに、これには応募することに意義があるのです!










「ミリィ! 見て見て、ほら合格通知!」

 学校で合格通知を開いて見せると、ミリィはちょっと怒った顔をしている。

「キラ・・・やっぱり、男の子として応募したのね?」
「あはは・・・」
「もう、ばれて怒られても知らないよ?」
「うん、その時は覚悟してる」

 いいんだ。
 ダメ元だし、もしかしたらちょい役とかでももらえるかもしれないもん。

 もちろん、怒られるだけかもしれないけど、「SEED」のオーディションに出られるってだけでもこんなに嬉しいんだよ?
 それだけだって、充分!

「仕方ないわね・・・。その時は一緒に怒られてあげるわよ」

 そう言って、ミリィはある紙を私の手の中に押し付けた。

「何?」
「見て」
「うん・・・」

 言われたとおり、素直に開くと、自分が持っている合格通知と同じ、2次審査の概要の書いてあるものだった。

「ミリィも男の子になったの!?」
「はぁ? 良く見てよ。私が受けたのは、主人公のオ・ト・モ・ダ・チの、女の子役!」

 よくよく見れば、確かに応募配役のところに、主人公の仲間で女の子の役だと説明が書いてある。

「そ、そんなのあったのぉ〜〜〜〜!!」
「やだ、キラってば、応募事項のところにちゃんと書いてあったでしょ?」
「うそ〜〜〜」

 じゃなに?
 わざわざ男の子の格好して主人公役に応募しなくても、他にも募集している役があったんだ〜。
 しかも女の子のー。
 ぜんぜんちゃんと読んでなかったよ〜。





 何はともあれ、自業自得。

 バレて怒られるのを覚悟で、ミリィと2人、第二次オーデション開場へ行く事となった。















「うわぁ〜、すごい人だねー」
「本当に、今日は主人公と、その友人のオーデションらしいからね。たくさんいるんだと思うわ」

 オーデション開場には、人、人、人!
 たくさんの人であふれかえっていた。

 この人達、全員1次検査を通過した人たちなんだ・・・。
 いったいどれだけの人が応募したのかな?

「キラはあっちの部屋でオーデションするみたい。私はこっち」
「違う場所でするんだぁ」
「これだけ人がいるんだもの。しょうがないよ。じゃ、とりあえず、オーデションが終わったらメールを入れてね」
「うん、ミリィも頑張って!」

 行こうとするミリィに手を振ると、少し肩をすくめて笑った。

「私はキラと違って、別に出たい訳じゃないから。バレてキラが怒られた時に、一緒にいて、慰める役が私の役どころだもの」
「ミ、ミリィ・・・。もしすごく怒られたらゴメンね?」
「覚悟してる。じゃね!」

 笑いながら行ってしまったけど、ほんと、ミリィって優しい。
 ミリィとは小学校以来の腐れ縁だけど、本当にいい親友だと思う。
 腐れ縁にも感謝したいぐらいにね。

 ちょっと微笑んで、私は自分のオーデションの部屋に行こうと、足を後ろに踏み出す。

「うぷっ!」

 振り返ったとたん、何かにぶつかって、何にぶつかったのかと確認しようとした次の瞬間、私の頭の中は真っ白になった。

 目に入ったのは私の大好きな絵本のキャラクターの月の王子様。
 肩で切りそろえられたサラサラの銀の髪に、色素の薄い切れ長の青い瞳。

 まさに、月の王子様をそのまま実写にしたような、男性にしてはすごく綺麗な男の人が目の前に立っていた。

 年齢は私とそう変わらないはずだと思う。

 ハイネックのニットに、黒いGパン。
 すらりとした体格に似合っている。

 どうやら私はこの人にぶつかってしまったらしい。

「ご、ごめんなさい!」
「いや、大丈夫だ」

 急いで謝る私に、まさに気品を感じさせるような笑みを向けて、私はクラクラとしてしまう。

 本当に月の王子様、そのまんまだよ〜。

 思わず見とれてしまった私に、月の王子様は怪訝そうな表情になる。

 どんな表情をしても、かっこいい!

「もうすぐすべてのオーデションが始まる時間になるが、君は行かなくていいのか?」
「え? あっ、い、行きます!」
「そうか、頑張れよ」
「あ、ありがとう・・・」

 そう言い残すと、彼は颯爽と通り過ぎて行ってしまった。

 なんだろ?
 この人もオーデションを受けに来たのかな?

 ああ〜、名前ぐらいは聞きておけば良かったよー。

 後で、ミリィに自慢しちゃおう!

















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 結城は、まったくもってアホです。
 乙女キラキラ光線を反射させ、くるくる廻っております。
 月の王子様・・・星の王子様のそのまんまのぱくりです・・・。
 すみません(汗)
 だって星の王子様っていいでしょ?
 薔薇を育てて・・・いえ、何でもありません。

2004/02/14 作成