ジオラマ
夢の始まり。
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オーディションは順調で、女の子だとばれる事もなくとりあえず終わった。 私の胸についている番号は214番。 きっと500人近くの人が、2次オーディションを受けている。 次は最終審査だけど、20人しか受からないらしい。 少しでも監督さんの目に止まって、何かのちょい役でももらえないかと期待してたんだけど、やっぱ世の中そんなに甘くはないもので、たぶん、「SEED」に関わる事が出来るのはここまで。 案外あっさりと終わってしまいそうな気配に、がっくりとうなだれてしまう。 あ〜あ、さっきの月の王子様、ひょっとしてオーディションを受けるのかと思っていたんだけど、それらしい人は見かけないんだよね。 結局、月の王子様も誰なのかわからないのか・・・。 「214番」 自分の番号が呼ばれたような気がして、慌てて目の前に集中する。 「・・・214番。298番、298番。367番、367番。・・・」 目の前で最終審査に残れる人の番号が読み上げられていて、自分の番号が呼ばれた。 「以上、読み上げられた番号の方は、最終審査の説明を書いた用紙を配りますから、取りに来て下さい」 残れなかった人が残念そうに何か言いながら帰っていく流れに逆らって、私は慌てて前に出ていく。 配られている用紙をしっかりと受け取り、呆然としたまま、会場の出入り口に向かう。 嘘・・・。 さ、最終審査に残れちゃったよ!! 出入り口に先に待っていたミリィを見つけ、私はすぐに飛びついてしまった。 「ミリィ! 最終審査まで残れちゃったよ!」 いきなり飛びついてきた私に、ミリィもにっこりと笑う。 「キラ、良かったじゃない。これで最終審査にも一緒に行けるね」 「へ?」 言っていることが判らず、首をかしげている私に、ミリィは自分の合格用紙を見せてくれた。 「うわっ! ミリィも合格したんだ! すごいね」 「私みたいな普通の女の子が残れるなんて、ちょっとびっくりしたんだけど、どうやら普通の女の子タイプがいいみたい」 「へ〜、じゃあ、ミリィが受かるかもね」 「まさか、演技の勉強すらしたことがないんだもの。最終審査で落ちるわよ」 この時、全然期待していないミリィが選ばれるなんて、知らずに話していたのだけれど・・・・・・。 最終審査でも私の性別はバレないまま、無事にカメラテストを兼ねた、ちょっとした演技のテストが終わった数日後、最終審査の通知書が届いた。 内容は、『合格』。 ・・・ん? 合格? ご、合格!? 慌てふためいてもう一度用紙を見れば、『合格』の2文字がしっかりと書いてあって、私は慌ててミリィに電話してしまった。 「ミ、ミ、ミ、ミ、ミ、ミ・・・」 『セミ?』 「違う!!」 慌てるあまり言葉が出ない私に、セミの物まねをしてると思うなんていくらなんでもちょっとひどいと思う。 いっきに脱力してしまった私は、今度はちゃんと話すことが出来たのだけど、セミはないよね? 『合格しちゃったんだ〜。キラの性別、バレてないんだよね? どうしようか・・・。あれ? 私にも通知が来てる・・・って、えっ!?』 電話の向こうで、何か物を倒す音とともに、ミリィの小さな悲鳴が上がる。 何やってんだろう? 「ミ、ミリィ?」 『キラ・・・』 「ん?」 『私も合格してた・・・』 「ええっ〜!?」 かくして2人とも合格と言う事になったのである。 ・・・って言うか、ミリィは問題ないんだよね。 問題なのは私の方で、まだ性別隠したままなんだけど〜。 最大級の大問題を抱えたまま、私とミリィは途方に暮れてしまうのだった・・・・・・。 「すみませんでしたっ!」 監督さんに向かって私は深く、深く頭を下げる。 本当のことを話した監督さんは、目を大きく見開いたまま固まっているご様子。 願いが現実になって、いかに自分がしてはいけないことをしたと今ごろわかっても、監督さん達には本当に迷惑な話だよね。 これでまた主人公の子を探さないといけないんだもん。 「すみません!! キラに悪気はないんです! 選ばれるなんて思ってなかったから、少しでも夢が見られればって・・・」 「本当にすみません!!」 横でミリィが一緒に謝ってくれている。 監督さんの横にいた服監督さんは、米神を抑えてあきれたような表情で首を振った。 本当にどうしよう・・・。 「・・・本当に女の子なの?」 「はい・・・」 「本当に、本当に?」 「本当に、本当です・・・。うちの学校、女子高ですし・・・」 「女子高!?」 「はい」 オーディションの時にかぶっていた長い髪を隠す為の帽子も脱いで、制服も着ていて、どうしてそこまでくどく確認するのだろうか? しかも、女子高に通っていると言って、そこまで驚くのは何故? そんなに、男の子に見えるのかな? 「・・・ま、いいや」 「「「は?」」」 監督さんの言葉に、私とミリィと副監督さんの言葉がハモる。 「女の子でもいいよ。撮影の時は男の子の格好してればいいんだもんね」 「フ、フクダ監督! あなたまさか・・・」 「いいじゃない。ここまでイメージにぴったりな子がいるのに、いまさらまた探し直せって? もう時間だってないのに?」 「ですが・・・」 和やかな雰囲気を漂わせていた監督さんは、納得できない表情の副監督さんを表情を変えて、睨んで黙らせ、凄んだ雰囲気のまま私を見た。 「履歴書に偽りを書くという事は、社会的に問題だってことはいくら君でもわかっているね? 謝って済む問題じゃない。オーディションをするのに、どれだけの時間と、労働と、お金がかかっているのか考えてごらん? 君のせいで、それらがもう1度かかるんだよ? 君にそれらを払うことが出きるほどの金額で出来ると思っているなら大間違いだ」 「・・・・・・」 「君にはぴっちり償ってもらうつもりだ! 撮影の間、君には僕の言葉に絶対服従してもらう。いいね?」 「は、はい!」 有無を言わせないような言葉に、私は勢い良く返事をした。 役を失わないで済んだ事は嬉しいけど、本当に大変な事をしてしまったのだと深く反省させられる。 結局私は、主人公の役をやらせてもらえることとなり、その事で両親が呼び出され、またこぴどく叱られてしまうのだった。 |
さて、これから撮影開始です。
メンバーもそれぞれ増えてきますが、何だか、これってキラじゃないような気が・・・・・・あははは・・・・。(汗)
パラレルだし!
ドラマの中ではこんな性格だってことで!!
2004/02/23 作成